2011年9月28日水曜日

演出論的覚書:Ⅳ章3節4款:作中世界に関する演出III。外的事象

  (4)作中世界に関する演出 III:外的事象への参照

  自社作品の中だけでなく、実在の人物や歴史上の事件(とりわけ歴史上の有名人)を取り上げている作品や、特定の他の創作物等を連想させる作品も存在する。

  現実の諸事実を題材としている作品の例としては、『戦国ランス』『恋姫†無双』『学園☆新選組!』Maybe-soft、2008年)、そしてLiar-softのいくつもの作品が挙げられる。登場キャラクターの名前を特定のカテゴリーに沿わせる例も多い(――戦国武将や文豪の姓、あるいは艦船名、温泉地名、駅名など。実例については別掲のコラムを参照)。

  既存の創作物を参照している例としては、戦隊特撮や魔法少女アニメといった特定のジャンルを念頭に置いた様式模倣的作品群が代表的であり、また個別にはとりわけマリゴールド系列ブランドのいくつかの作品が挙げられる。文芸作品や神話伝説(『不思議の国のアリス』、クトゥルー神話、北欧神話など)を下敷きにした作品もあり、有名な伝承上のキャラクター(玉藻前[九尾の狐]、雪女、ドラキュラ的吸血鬼、メフィストフェレスなど)を登場させるものもあり、さらには童話の明示的パロディ(『メルティ・メルヘン』ぱんだはうす、2003年]、『黒の図書館』ふぉ~ちゅん♪、2003年])に至るまで、枚挙に暇が無い。

  これらの手法もまた、確立された既成の表象にアピールすることによって、その作品単体に留まらないイメージの広がりと厚みをもたらしうる。ただし実際にはその用い方は作品毎に様々であって、作品コンセプトそのものがその参照元と密接に結びついている場合もあれば、物語やキャラクターや設定等の特定の箇所についてのみ関連を有する場合もあり、あるいは個々の具体的事象とは無関係にそのムードのみを援用している場合もあり、あるいは作品内容とは無関係な単なる遊戯的仕掛けにとどまる場合もある。また、これらはPC用AVGに固有の技法ではなく、それ以外の多くのメディアにおいても実行されているオーソドックスな手法である。



  【追記コメント】
  その後、「アーサー王伝説」に(キャラクター等を)取材した作品がいくつか現れた:『Knight Carnival!』『12+』。既存創作物の一例として挙げられてよいだろう。
  上で挙げたのは、マリゴールド系列のそれを別とすれば、史実や伝承などの「古い」ものばかりだが、時代を下った比較的新しい創作物として有名なアニメや漫画を(部分的に)下敷きにしたものもある。『怪物くん』(の怪物トリオ)、『めぞん一刻』、等々。
  最近では、歴史上の有名人等を脈絡なく登場させるというパターンも現れている。ジャンルの爛熟を示す現象といえよう。例えば『超時空爆恋物語』(2010年)や、発売予定の『英雄*戦姫』など。……いや、そういえばその昔、『Rumble 〜バンカラ夜叉姫〜』(2000年)なんてのもあったか。web上の情報でしか知らないが。ALcotも、精力的にこの路線を走っている最中だ:『幼なじみは大統領』(2009年)はオバマやプーチン(をモデルにしたキャラクター)をヒロインにしているし、『鬼ごっこ!』(2011年)は桃太郎や金太郎をモティーフにしている。『美脚エージェント・麗華』(2009年)は格闘ゲームのキャラクターたちだし、古くは『あやよさん4』(1993年)に春麗もどきが登場していた(※実機で先輩に見せていただいたことがある)こともあった。このようにキャラクター単体でみれば、実例は無数にあるし、これからも無数に生まれていくだろう。
  珍しい例として、『こみっくパーティー』(Leaf、1999年)では、実在の同人作家たち(の名前)が大量に登場する。作中では、主人公がSLGパートで作成する同人誌に関して、彼らに寄稿依頼をおこなうこともできる。

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