2011年10月1日土曜日

演出論的覚書:Ⅳ章4節5款β:タイトル画面

  (β)タイトル画面(ゲーム開始画面)は、プレイヤーが作品に接する最初のインターフェイス部分であり、作品の「顔」としての重要性がある。それゆえ、タイトル画面にはしばしばメインテーマ曲がBGMとして流されている。

  タイトル画面は、しばしば遊戯的細工の対象となる。表示されるキャラクターやタイトルコールの音声がランダム変化するものが代表的であり、またあるいは起動日時に応じてタイトル画面に様々な変化が生じるものもある。例えば『ファンタジカル』は、日中に起動するとタイトル画面が明るく、夕方に起動すると橙色に染まっているといった変化がある。『パティシエなにゃんこ』以降のpajamas soft作品では、祝日や登場人物の誕生日など特定の日付で起動すると特殊なヴァージョンになる。『ワンダリング・リペア!』では、タイトル画面に時刻読み上げ機能が設けられている。タイトル画面に動的演出(動画アニメーション)を導入した作品もあり(『はるかぜどりに、とまりぎを。』)、起動時にアヴァンタイトル風のシークエンスを組み込んだものもある(『少女魔法学 リトルウィッチロマネスク』)。タイトル画面のまま放置しておくとなんらかの変化が生じる場合もある。『瀬里奈』アトリエかぐや、2004年)ではタイトル画面全体が次第に夕陽の朱に染まっていき、Purple software作品ではキャラクター紹介デモが始まる。

  機能上の意味を伴う演出としては、ゲーム進行状況に応じてタイトル画面を変化させる作品が多数存在する。例えば、到達エンディング数などによってタイトル画面が変化する作品(『月陽炎』すたじおみりす、2001年]、『パンドラの夢』『彼女たちの流儀』130cm、2006年]、『片恋いの月』『きっと、澄みわたる朝色よりも、』propeller、2009年]など)。あるいは、エンディングを迎えたキャラクターの姿がタイトル画面に現れていく作品(『うさみみデリバリーズ!!』すたじおみりす、2003年]、『天使のいない12月』『PRINCESS WALTZ』など)。さらに、全ルートクリアするとタイトル画面が様変わりする作品がある(『水月』『カルタグラ』『さくらシュトラッセ』など。作品の完結を強く印象づける演出である)。他方で、初回起動時のゲーム開始形態について特殊な演出的処理を施す作品もある(『天使のいない12月』『らくえん』『朱』ねこねこソフト、2003年]など)。以上のほか、特定のフラグ充足(通常ルートの全クリアなど)によって、タイトル画面で特殊なモード(エクストラシナリオなど)が開放されるという作品も数多く存在する。



  【追記コメント】

『ファンタジカル』 (c)2008 UNiSONSHIFT

  起動時刻(OS上の設定時刻)によってタイトル画面も変化する。上図は午前7時半の起動時、中図は午後5時過ぎの起動、下図は午後9時前の起動。画面右下の懐中時計も、OSの時刻に合わせて実際に時を刻んでいる。





  タイトル画面変化、とりわけ到達ED数に応じてタイトル画面のBGMが厚みを増して華やかになっていく(楽器演奏パートを増やしていく)手法は、ALcotのお家芸とも言える。『月陽炎』(現ALcotの主要スタッフにより、すたじおみりすから発売された)の頃から、近年の『大統領』『鬼ごっこ!』に至るまで、くりかえし行われている。

  タイトル画面がランダム変化するものもある。例:『coμ』では、タイトル画面を表示する度に、主要キャラクターのいずれか一人がランダム表示される(※ゲームブランド公式サイトの入り口ページで時折見かけるのと同種の趣向)。同様に、タイトル画面等でのタイトルコールが様々なキャラクター(の声優)によって発声される場合(例:ソフトハウスキャラ)もあれば、起動時諸注意(18禁表示等)の画像やアナウンス音声が何種類か用意されていてランダム変化する場合(例:ぱれっと)もある。

  管見のかぎりでは、タイトル画面の「時刻変化」の最も早期の例は『腐り姫』(2002年)。同じく、進行度に応じたタイトル画面変化の例としては『パンドラの夢』(2001年)が早い。『パンドラの夢』と同じ月(2001年11月)に発売された『家族計画』も、EDを迎えたヒロインがタイトル画面に現れていくらしいが、こちらは未プレイなので未確認情報。『3days』(2004年)も、EDを迎えたキャラクターにゆかりのあるアイテムがタイトル画面に追加されていくという演出があった。

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