SD絵の長所としては、(1)その画風がコミカルな場景を表すのに適している、(2)通常の立ち絵画像との落差が視覚的抑揚に寄与する、(3)画風そのものがデフォルメに強く傾斜しているため誇張的表現に堪えうる、(4)制作コストが低いため視覚表現充当に活用できる(画像素材作成が容易)、(5)汎用性がある(キャラクター表示アイコンやアイキャッチ等にも使える)、(6)描き込みが少ないためアニメーションさせやすい、といった要素があると考えられる。
【追記コメント】
『君が望む永遠』 (c)2001 age
(上図、下図:)作中で「遥の伝説」(遥伝説)と呼ばれる、名高いSD表現の一つ。素朴でおおらかな描線とクレヨン調のパステル着彩が、牧歌的な回想シーンを印象づけている。また、上図画像と下図画像を連続切り替えすることによって、擬似アニメーションを行っている。画像自体は、画面全体を覆うフルサイズ。
『明日の君と逢うために』 (c)2007 Purple software
このように、全画面サイズではなく小さいサイズのカットインとしてSD画像が挿入される場合もある。デフォルメの度合いについても、ここまで簡素化される場合がある。
『剣乙女ノア』 (c)2007 TAIL WIND
(図1~図3:)このように、複数のSDカットを連続使用してひとつづきの流れを描写する場合もある。
※実際には、この場面では左に引用した3枚以外にも数枚のSD画像が使用されているが、この引用では適宜省略してある。
本作のSD表現に関しては、以下の特徴が指摘できる。(1)複数カットを連続使用している点、(2)非全画面表示である点、(3)フキダシ台詞を画像上に書き込んでいる点、(4)着彩それ自体は通常シーンと同水準である点。(5)太い枠線の存在。これらの要素を通じて、全体として四齣漫画のような印象をプレイヤーに与える。
『恋色空模様』 (c)2010 すたじお緑茶
(上図、下図:)路上をバイクで疾走するシーン。「遠景の山と雲」、「道路脇の木々」、「流れていくセンターライン」、「キャラクター部分(バイクの2人)」の4つの層が、それぞれ独立にアニメーション(拡縮やスクロール)している。
※テキストボックスは一時消去してある。
『Chu×Chuアイドる』 (c)2007 UNiSONSHIFT
アイキャッチの中で使用されるSDイラストの一例。このキャラクター表示は、現時点でどのヒロインのルートに乗っているかを示すサインの役割も果たしている。
本文では2000年の『Lien』を挙げたが、もちろんそれ以前からSD表現は取り込まれていた。例えば、たしか『晴れのちときどき胸さわぎ』(カクテルソフト、1997年)――あるいはこのシリーズの別の作品だったかもしれない――あたりでもSDによるギャグシーン表現があった筈。参考リンク:ウェブサイト「Area-t'」の『晴れのち胸騒ぎ』紹介記事。さらに言えば、『狂った果実』(フェアリーテール、1992)のクレヨン絵もこの関連で言及してよいかもしれない。
0 件のコメント:
コメントを投稿