(※雑記からの抜粋であって論述の体裁が整えられていない由、ご容赦いただきたい。)
テキスト+立ち絵画像+背景画像を基礎にしたAVGの枠組では、運動表現(スポーツ表現)に困難が生じると考えられるが、実際にはどのようになっているだろうか。一例として、野球(ソフトボール)シーンのある作品をいくつか取り上げて振り返ってみたい。
なお、以下に紹介する作品の他にも、野球(ソフトボール)や野球部の関わる作品はいくつも存在する。例:『うちの妹のばあい』、『まじのコンプレックス』、『Last Waltz』、『DISCIPLINE』、『マネジ』シリーズ、『TRUE BLUE』、『夏色ストレート!』、『コンチェルトノート』、『花咲くオトメのための嬉遊曲』、『放課後のマネージャー』、『尽くしてあげちゃう3』、『シス☆ぽん』、『ひのまるっ』。また、『ほしうた』のようにバッティングセンターシーン(※一枚絵あり)のある作品も存在する。ちなみに、『ビッグマグナム・張本先生』はたぶん違う。『兄妹秘哀』も、例の有名な双子ピッチャー漫画とは無関係の筈。
『英雄*戦姫』 (c)2012 天狐
本作のAVGパートは、全体マップの上に、画面上半分の背景と正面固定立ち絵(一人のみ)を置くスタイルである。画面演出の融通は利きにくいが、横幅を活かした伸びやかな立ち絵造形が可能になっている。野球(?)シーンは、この枠組の範囲内で、基本的にテキストワークのみで処理されている。
『恋色空模様』 (c)2010 すたじお緑茶
フェイスアイコンの配置及び移動による運動表現の手法は、『行殺☆新選組』(Liar-soft、2000年)以来、よく知られている。このシーンでは、校庭の遠景俯瞰画像、顔アイコン(の移動)、ボールの軌道表現、可動テキストボックス、VFX群によって投球、打撃、走塁等が表現されている。
『終わりなき夏 永遠なる音律』 (c)2009 Φage
緻密なスクリプトワークによる運動表現は、『君望』『マブラヴ』を制作してきたこのメーカーの特徴である。立ち絵(ポーズ変化/位置指定/移動/エフェクト付与)、背景(位置指定/拡縮/ボカシなどの加工)、一枚絵、様々な特殊効果等によって勝負の劇的推移を形作っている。左図は力強い投球の瞬間。
『こんそめ!』 (c)2010 Silver bullet
動画素材を嵌め込む手法もある。左図のシーンでは、投球モーションからボールの到達までの一連の流れが、レトロゲーム風の動画によってアニメーション表現されている。この場面以外は、一般的な立ち絵+背景スタイルである。/なお、この動画部分は、本作のデモムービー(OPムービー)の中でも使用されている。
『明日の君に逢うために』
(c)2007 Purple software
特殊素材と動画素材の折衷様式も存在する。左記引用画像では、GIF動画並の簡素な動画パーツが画面内に組み込まれている。このシーンでは、対峙する二人、振りかぶるピッチャー、スイングする打者、上がる打球、走塁する打者といったいくつものショットがデフォルメカットインの形で使用されている。視覚描写拡充と制作コスト節約を両立させた、効率的な表現と言える。
『桜花センゴク』 (c)2010 ApRicoT
この作品では、ピッチャーマウンド側とバッターボックス側の一枚絵を用意することにより、テキスト進行に即応した視覚表現を実現している。さらに、バットを構えた特殊立ち絵を使用して、それをグラウンドを表示する背景画像の中に縮小表示で嵌め込むことにより、その場面の様子を表すという手法も採っている。/野球シーン一枚絵は、『腐り姫』『終わりなき~』『シス☆ぽん』も使用している。
『Maple Colors』
(c)2003 CROSSNET/ApRicoT
本作に多数含まれるミニゲームの一つである。画面右をボール型アイコンが移動するのを見て、大きな円に合わせてタイミング良く左クリックするとストライクを取れる。この他にも、バッター側でのミニゲームもあり、さらにピッチングシーンの迫力ある一枚絵もある。
このように、
a) ごく一般的なテキスト基軸の描写だけでなく、
b) アイコンやカットイン等の特殊素材を用いた複合表現、
c) 立ち絵ベースでありながらスクリプト演出によって視覚表現を緻密化するアプローチ、
d) 動画使用による個性的なスタイル、
e) 専用一枚絵(イベントCG)の投入、
f) ミニゲーム形式での専用シーン
に至るまで、AVGの枠内で様々な運動表現が試みられている。
様々なスポーツの中でも野球には、特殊な難しさがある。1)特殊なルールに従って複雑に推移するスポーツであり、2)多数の人物が同時に参加し、3)それぞれに特有の行動(素手で球体を投げる、棒を水平に振る、地面に置かれたクッションの上で構える、等々)をとり、4)比較的小さな物体(ボール)に注目が集められ、5)しかも100m四方にも及ぶフィールドの中で注目が向かう場所(地点)が大きく変動していく。こうした制約の中で、とりわけ上記『終わりなき~』の野球対決シーンは特筆に値する密度と劇的緊張を実現している。
(2012年10月24日:雑記欄で公開。同11月22日:単独記事化)
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