2013年2月3日日曜日

AVGにおける再現(不)可能性について

  AVGの再現(不)可能性について。
  SLG作品のみならずAVG作品にも再現不可能な一回性の出来事が時として存在するという話。

 
  アクション要素のあるゲーム(STGであれスポーツゲームであれ)においてはプログラム側の技術的設計(乱数要素)とプレイヤー側の技術的限界(操作スキル)の双方のために状況の完全な再現はしばしば困難であり、また複雑なSLGにおいても、ある特定の状況または状況群の特定の連なりを完全に再現することはしばしば至難なものになる。それに対して大多数のAVGは、プレイヤーの介入手段の固定性――主として選択肢場面における決定のみである――と、それに対するリアクションの固定性――選択肢決定に対応するフラグ変動は通常固定されている――のゆえに、その都度の状況の一回性を手放しており、基本的にはそのあらゆる部分が同一の形で再現できるようになっている。それがただ単に構造上の単純性のゆえに結果的にそうなっているのか、それとも再読可能性要請のような意識的な設計の下でそうなっているのかに関しては、慎重な検討の必要があるが。

  しかしながら、そのような再現可能性を持たない場合も、少数ながら存在する。それらは基本的にグローバルフラグに関係する形で存在し、個別セーブデータの保存によっては対処できないことが多い。そのシーンを再度見ようとするならば、いったんアンインストールして再インストールする必要がある(――実際には、全体をアンインストールせずとも、そのフラグを管理するファイルの特定の状態を保存しておくという対処で済むが)。

  1)ゲーマーが最も頻繁に遭遇するであろうパターンは、タイトル画面変化である。周回数、到達ED数、オールクリア等に対応して、タイトル画面の形状が不可逆的に変化していく(cf. 演出論Ⅳ章4節5款β。私の知る最も早い例は、2001年10月発売の『月陽炎』)。

  2-a)次いで、プレイヤーに対する進行ガイドのために、あるいは特定の演出上の意図のために、初回プレイ時のみに特定の表現を提示するという場合がある。このような特殊な介入表現は、SLG作品ではけっして稀ではなく、そしてAVG作品においても時折見られる。プレイ補助のための特殊な(一度しか見られない)シーンの一例として、『まじのコンプレックス』が挙げられる。オムニバス的連作ものの第3作に当たるこの作品では、初回プレイ開始時に、前作をプレイしたか否かを問うシーンが挿入される。そしてその返答に対応して、本編中の細部が調整される。この仕様のため、この作品では「全てのテキストを既読状態にする」ことはおそらく不可能である(――セーブデータ移動などのシステム外在的な操作をすれば可能であろうが)。『リトルバスターズ!エクスタシー』にも同種のシステムがあるとされる(※筆者は未プレイ)。さらに、これと類似するが本編開始前ではなく事後的な選択になる進行補助機能として、『HoneyComing』オンリーワンモードがある(――ユーザーの指定する特定ヒロインのみが攻略できる固定化モードである。ただし、全面的な択一化ではなく、これ以外のモード上では他のヒロインを攻略することが依然として可能である)。

『まじのコンプレックス』 (c)2010 light

  シリーズ第3作に当たるこの作品では、この導入テキストに続いて、第1作『さかしきひとにみるこころ』及び第2作『どんちゃんがきゅ~』をプレイしたか否か、そしてどのようなエンディングを見たかが質問される。
  左記画面に登場している「ありみ」は、第1作のメインヒロイン「真柄亜利美」。『まじの』本編にも登場する。


  2-b)他方で、もっぱら演出上の意図によると考えられる一回性の表現として、例えば『天使のいない12月』の冒頭シーンが挙げられる。初回プレイ時の、つまりゲーム初回開始時のための、特殊な表現効果が意図されている。

  3)さらに大掛かりな再読制約を課してくるものが、とりわけループゲームの中にいくつも存在する。ただし、ここでいう「ループゲーム」は、作中キャラクターの意識が時間的に遡行する物語という意味ではなく、システム上の循環(周回)プレイが要求される作品のことである。タイトル画面からゲーム「スタート」しても、その都度のグローバルフラグ上の周回状況によってその進行はまったく別物になり、以前の周回でプレイした地点に再度到達することが出来なくなっている。その相違の創出は、例えば選択肢の出現や消滅のような比較的小さな変化もあれば、あるいはテキスト全体がまったく異なったものになるという大規模な変化もある。後者の例としては、『腐り姫』『夢幻廻廊』などが挙げられる。ただし、本編中表現としては再現できないとしても、回想モードに登録されていれば、そこで個別イベントを再度閲覧することはもちろん可能である。また、プレイ状況に応じて局所的変化を生じるのは、ループゲームに限らない。

  4)システマティックな次元からの不可逆的変化の導入として、パッチ等を用いるものがある。典型的にはFizzやSofthouse-sealが予約特典として実行してきたような、「ニーソ化パッチ」「スク水化パッチ」「裸パッチ(※立ち絵が全裸になる)」「ボディペインティングパッチ(※立ち絵の服装がそのようなものになる)」であり、これらの適用如何はゲームアプリケーションの内部では(例えばコンフィグでは)制御することができないのが通例である(――パッチ適用後はセーブデータが仕様上後方互換が失われることが多い。当該パッチのみを正常にアンインストールできるタイトルもあるが、それはゲーム外の操作と見做されるであろう)。

  5)完全な一回性の問題ではないが、結果の確定性が存在せず再現性が保障されない場合もある。例えば『アトラク=ナクア』のあるシーンは、乱数によって発生するか否かがその都度決定されるため、フラグを合わせてもそのイベントが発生しないこともある。同様に、『ToHeart2 XRATED』及び『ToHeart2 AnotherDays』にも、複数のCG差分の中からランダムで一種類が表示される場面がある。これらは、直前のセーブデータから何度か再試行すれば、目当ての表現に到達できる。stoneheads作品にも、選択肢決定に対するリアクションが一様でないというものがある(――これらのほか、進行ルート全体に対して影響のあるランダム性の実例として『十次元立方体 サイファー』が挙げられることがあるが、筆者は未プレイ)。

  なお、SLG+AVG作品の中にも、特定のイベントが見られなくなるという状況は存在する。例えば『BUNNYBLACK2』では、2周目プレイ時に(つまり一回以上EDを見た状態で初めて、最初からゲーム「スタート」した場合に)特定ユニットが加入するイベントが発生するが、これは3周目以降ではもはや発生しなくなる。一回限りのイベントである。副次的影響による制約の興味深い例としては、『忍流』の配下ユニットが0人になった時のゲームオーバーイベントがある。この作品では、ゲーム開始から一定ターン経過すると、絶対にロストしないユニットが加入し、そして2周目以降のプレイではそれらの不死身ユニットが最初から配下にいる状態でゲームスタートする(※2周目以降の新規プレイ開始時にそれらが配下にいない状態を選択することは出来ない)。それゆえ、配下全滅イベントは、事実上、1周目のごく序盤のうちにしか実現できない。


  ※ランダム要素導入の実例については、当ブログの2011年12月28日付雑記でも書いた。

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