(1)AVG作品におけるシステムと演出の関係
通常のAVGの形態では特定のシナリオ構造を適切に表現することができず、そのため特殊なシステムが要求される場合がある。代表的なのはループシステムとルートナビゲーションシステムの複合形態である(註18)。『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(elf、1996年)の名高い「A.D.M.S」と、『蒼色輪廻』(美遊、2004年)の「時空跳躍システム」及び「走馬燈システム」が、これに該当する。
Lassもゲームの進行制御のために様々なシステムを試みており、『3 days』(2004年)の「ナビ機能」(とループゲームの連動)、『FESTA!!』の「Story Stick System」、『11 eyes』(2008年)の「クロスビジョンモード」と、一作毎の挑戦がある。このほか、『螺旋回廊』(ruf、2000年)のインターネットパート、『お願いお星さま』(PULLTOP、2004年)の星図盤システム、『最果てのイマ』(xuse、2005年)の「BLOG」と称するハイパーリンク型進行制御、『ワンダリング・リペア!』(Escu:de、2008年)の話題選択とメモリーシステムのように、様々な独自システムのAVG作品がある。
さらに、特徴的なゲームシステムがそれ自体で独自の演出的効果を発揮しうる場合もある。「デジタライズド・ゲームブック」と銘打つLost Script作品、『蠅声の王』(2006年)及び『長靴をはいたデコ』(2007年)が、その一例である(――後者の作品は、「可変ウィンドウ」という試みをも実行している)。ゲームブックを模したシステムは、『Thief & Sword』(縁、2009年)も実行した。同様に、村全体を俯瞰するマップの中に個別イベントが生成消滅していくリアルタイム進行制の『days innocent』(inspire、1999年)も、その設計を通じてこの作中世界の見え方と接し方をおのずから表出している。千世作品が採用した「サイティング・システム」――選択肢の一種であるが――も、作中世界に対する主人公=プレイヤーの見方及び関わり方を体現している(――『六ツ星きらり』[2004年]、『七彩かなた』[2006年])。
註18) フローチャート型のルートナビシステムは、それ単体としては、数多くの作品に搭載されている。たとえば『フォークソング』(REWNOSS、1999年)、『顔のない月[DVD版]』(ROOT、初版:2000年/DVD版:2002年)、『鬼医者』(SAGA PLANETS、2002年)、『Kissing!!』(valhalla、2003年)、『裏入学』(アトリエかぐや、2004年)、『偽りの教室』(Dark Side、2005年)、『姦染』シリーズ(SPEED、2006年~)、『背教学園』(Anim、2006年)、『人妻×人妻(つまつま)ADV』(DISCOVERY、2006年)など。とりわけアイル(『脅迫』[DOS版:1996年/WIN版:1998年]など)、elf(『百鬼』[2002年]、『河原崎家の一族2』[2003年])、SCORE/しゅこあ!(『先生だ~いすき』[2002年]など)は、複数の作品でフローチャート型の進行補助システムを導入している。このほか、フローチャートによる図示とは異なるが、章選択機能を設けている作品も存在する。 |
【追記コメント】
リンク:
美遊公式サイトの『蒼色輪廻』紹介ページ。「ゲーム」欄に「走馬燈システム」「時空跳躍システム」「鍵システム」の紹介がある。(※注意:左記リンク先にはアダルト画像が含まれる)
Lass公式サイトの『3days』ナビ機能紹介ページ。同じく、『FESTA!!』Story Stock System紹介ページ、『11eyes』クロスビジョンモード紹介ページ。
千世公式サイトの『六ツ星きらり』システム紹介ページ及び『七彩かなた』紹介ページ。ともに「サイティングシステム」の紹介。
xuse公式サイトの『最果てのイマ』システム紹介ページ。「Blog」システムの紹介。
Escu:de公式サイトの『ワンダリング・リペア!』システム紹介ページ。種選択/話題選択/時計修繕の3パートについての説明がある。
Lostscript公式サイトの『蠅声の王』紹介ページ及び『長靴をはいたデコ』紹介ページ。デジタライズド・ゲームブックのシステム紹介がある。(※注意:左記リンク先にはアダルト画像等が含まれる)
縁公式サイトの『Thief & Sword』システム紹介ページ。アイテムシステム、戦闘システムなどの紹介がある。
SAGA PLANETS公式サイトの『鬼医者』システム紹介ページ。「鬼医者モード」と賞する簡易的なフローチャートジャンプシステムについての紹介がある。(※注意:左記リンク先にはアダルト画像等が含まれる)
アトリエかぐや公式サイトの『裏入学』システム紹介ページ。進行状況チェックシステムの紹介がある。
BLACK PACKAGE公式サイトの『偽りの教室』システム紹介ページ。「マップシステム」と呼称する進行ルート確認システムの紹介がある。公式サイトを見るかぎりでは、『牝畜』(2005年)、『姦獄』(2005年)、『牝奴の館』(2008年。2010年発売の廉価版で『貴醜の館』と改称)などの同社他作品にも同様のルートマップシステムが搭載されている模様(※未確認)。
Anim公式サイトの『背教学園』システム紹介ページ。フローチャートシステム、エンディングリスト、ミニゲームなどのシステム紹介がある。(※注意:左記リンク先にはアダルト画像等が含まれる)
アイルの『脅迫』(Win版)仕様詳細ページ。シナリオナビゲーションシステムなどの紹介がある。(※注意:左記リンク先にはアダルト画像等が含まれる)
elf公式サイトの『百鬼』システム紹介ページ(その2)。ルートナビシステムなどの紹介がある。『河原崎家の一族2』のシステム紹介ページでも、ナビマップなどを閲覧することができる。
『Festa!!』のSSSに類似したシステムは『ナツメグ』(コットンソフト、2007年)にもある(「RES」:Random Event System)。また、『11eyes』のCVMに類似したシステムは『見上げた空におちていく』(あっぷりけ、2007年)などにも見られる。
簡易ジャンプシステムは、『アトラク=ナクア』(1997年)や『終ノ空』(1999年)にも実装されていたほどのもので、発想としては別段目新しいわけではなかった。ただし、近年では、むしろフラグ分岐とはほとんど無関係になるまでに自律的にブロック化された脚本執筆パートが、可読性サーヴィスのためにこうしたフローチャート機能を自らのために有用なものとして再利用しているのかもしれない。章選択機能は、『コミュ』や『恋色空模様 after story and extra happiness』にもある。
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