2011年9月25日日曜日

演出論的覚書:Ⅲ章3節2款:Dreamsoft/SkyFish

  (2)DreamSoft/SkyFishによる動画使用演出の開拓

  このアプローチを意識的に開拓してきたブランドとして、DreamSoft(F&C FC03)の功績もきわめて大きい。PC用AVGにおいて動画演出をいち早く採用し、そして継続的に成果を挙げてきた重要な旗手であった。ブランド処女作『Beside』(2001年)においてすでにOPムービーを採用しており、さらに『North Wind』(2004年)、『Natural Another One 2nd -Belladonna-』(2005年)、『エーテルの砂時計』(2006年)といった一連の作品では、動画素材を本編中に組み込んだ動的演出に踏み込んでいる。主な使用場面は、アイキャッチ、ホラー表現、アクションシーンである。

  DreamSoftは活動休止したとされるが、その技術ともども、ひろもりさかな(弘森魚)代表に主導されたSkyFishに引き継がれている。なかでも『白銀のソレイユ』(2007年)は、ムービー挿入にとどまらず立ち絵操作やエフェクト演出をも含む様々な動的演出を追求したブランド渾身の力作として重要視されている。ムービー素材の使用場面は、各種エフェクト(爆発表現、魔術的力の発動表現、イメージ補強的表現などの合成表示)、変身シークエンスや各種アクション表現(とりわけ戦闘シーン)、カメラワーク演出の代行実現など、多岐に亘る。ただし、何十個もの動画素材を投入した代償として、当時の標準的なAVG作品に倍する5.5GBものHDD容量を要求するものとなっているが(註14)

  『はるかぜどりに、とまりぎを。』(2007年)、『キスよりさきに恋よりはやく』(2008年)といった同社後続作品においても、様々な動画利用演出が試みられている。活劇要素を伴わないこれらの穏和な作品においては、動画素材は単体で前面に出るよりもむしろ、水面のゆらめきやレンズフレアあるいは動的アイキャッチといった細部においてこそ活用されており、カメラワーク操作と立ち絵アクションを併用しつつ、複合的重層的なAVG表現が追求されている。


註14) 演出技術の発展(と実用化)は、部分的にはその媒体の物理的条件によって制約される。PCゲームについていえば、PCのパフォーマンス水準が、実行可能な演出の範囲を事実上限界づけている。言い換えれば、当該演出の実行に堪えるだけの性能のPCがユーザーの間に一定以上普及していることが求められる。ムービー演出の出現は、3D-AVGの発展史とならんで、まさにその代表例と言えるだろう。また、例えば背景パーツのアニメーションは、アーケードゲームや家庭用ゲームにおいてはすでに前世紀から広汎に実現されていたが、国内アダルトPCゲームにおいては近年までほとんど行われていなかった。前二者においては、比較的ドットの粗い(=軽量な)画像を、そのために特化したプラットフォームの上で処理していたが、後者においては静止画像の飛躍的な品質向上に対してそれを円滑な動的表示と両立させるのが困難であったことが、その一因であったと思われる。さらに、HDD容量の増大は高音質のフルヴォイス表現をも可能にしたし、ディスプレイの解像度上昇は画面内の情報量を増やすことを可能にした(――その恩恵を享受したのはAVGよりもむしろSLGであろうが)。
  中間的要因として、AVGにおいてはスクリプトエンジンが、個々の演出の形態及び品質に深く関わっている。エンジン側の改良によって実現可能に(または実行容易に)なった演出手法も少なくないであろう。アダルトPCゲームにおける主要なゲームエンジンの一覧及び利用状況について整理した記事として、ウェブサイト「電波とどいた?」の記事ゲームエンジンとか、ウェブサイトエロゲについてのあれこれ内の記事[番外] ゲームエンジンとプログラマー [不完全リスト]がある。なお、Wikipedia日本語版にも、記事Template:美少女ゲーム系/doc/ゲームエンジンがある。
  他方で、物理的な環境要因には左右されず、個々の制作パートの内発的イノヴェーションによってなされる技巧開拓もある(――例えばアダルトシーンのテキストワーク。cf. 4章1節)。それらの発明乃至発案は、直接的には、制作者がそれを発想するかどうか、そして実行しようとするかどうかに掛かっているが、より広く見れば、その表現技術を使用することがその表現分野に相応しいかどうか(換言すれば、そのジャンルの中で確立している美意識と様式感覚がどのようなものであって、どこまでの表現を受け入れようとしているのか)の問題でもあり、そしてまた、その表現技術を使用しようとする個々の作品が作品全体としてどのようなコンセプトを持っているかの問題にも不可避的に関わっている。上記の背景アニメーションやムービー演出やヴォイス表現についても、それらがある時期まで実現されていなかった理由は、ただ単に「技術的に実現困難だったから」「制作者がそれを知らなかったから」であるとは限らない。その時点でのPCゲームの様式感覚にとって、あるいは個々の作品にとって、それが演出上必要でなかった(有効だとは見做されなかった)から実行されていなかったという側面も考えられる。別言すれば、雑多な演出技術を闇雲に投入しても、作品全体として優れた成果を得られるわけではないということである。演出について考える際に、それらが常に個別作品の方向性(ディレクション)と関わっていること、そして当該ジャンル全体とカテゴリアルに関わるものであることは、看過されてはならない。




  【追記コメント】

  リンク:Dreamsoft公式サイトの『エーテルの砂時計』動画シーンサンプル紹介ページ(※サンプル用に縮小されたMPEGデータをダウンロードできる)。

  wkpdに参照指示を出しているからって笑うなー!w EGScape(のPOV情報)に丸投げしているのもたいがいひどいが。

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