《第5節:その他のいくつかの観点》
(1)3D技術と演出
さらにこの関連では、3D系作品にも言及されねばならない。ここでは詳論しないが、一例として『タイムリープ』(Frontwing、2007年)が分厚いコンテ集付きの限定版を発売したことを指摘しておく。3D作品における演出の重要性(必要性と可能性)を例証する事実であり、そして3D表現の可能性を示す事実であろう。
3D技術によるキャラクター表現を行わない通常の2DタイプAVGにおいても、3D技術は様々なかたちで使用されている。典型的には:(1)画像の拡大縮小操作等の円滑化のために。(2)背景画像やエフェクト素材の精緻なモデリングに際して(――なかんずく『パティシエなにゃんこ』以降のpajamas soft作品)。(3)ムービー表現の中で(――3章3節の各所をも参照)。
3D技術がPCゲーム業界に普及し採用されていくにつれてAVG演出の局所的な改良乃至拡張が進展するだけでなく、フル3D表現の浸透によって現在のAVGの基本構造と様式感覚と美意識と制作体制が将来的に根本的に転換されていく可能性がある。ILLUSIONやTEATIMEといった3D系ブランドの作品群によって、そして直近では例えば「まななつ」(Leaf、2009年[『愛佳でいくの!!』所収])によって、そうした可能性が具体化されつつある。
【追記コメント】
リンク:pajamas softの『パティシエなにゃんこ』システム紹介ページ。ページの中ほどに、店内背景画像の3D設計画面が掲載されている。『プリズム・アーク』背景アート紹介ページにも、多数の背景画像が掲載されている。3Dモデリングが正確な影表現にも貢献しているのが見て取れる。
pajamas softに限らず、現代のAVG作品では、とりわけ背景美術の作画に際して3Dモデリングが活用されている。例えば、ゆずソフトにおける背景作成作業の紹介:「ろどのお仕事紹介『背景について』」。
少し加筆してある。「3Dゲーム」と「ゲームにおける3D技術」を分けた程度だが。この論点はもっと広げて「演出を可能にする周辺技術」に関する展望へと開くことが可能――だがそれは単なる論理的可能性であって私の能力では実現不可能。
0 件のコメント:
コメントを投稿