【 コンフィグ 】
画面切り替え時にメッセージフレームを「消す/残す」というコンフィグがあるのはなかなかユニーク。ウィンドウ非アクティブ時の音声処理を「そのまま/小さ く/消す」から選択できるようになったのも嬉しい(――ここ数作のエンジンはずっと、非アクティブ時は自動的に音量が小さくなる仕様に固定されていて、正直に言うとちょっと鬱陶しかった)。キーコンフィグがあるのも便利。『Wizard's Climber』の頃からだっけ?
「SE」(効果音)と区別して「VE」(ボイスエフェクト)の音量を設定できるのも良い。SE一般と音声SEを機能上(あるいは概念上)区別するというアイデアは、ゲームコンフィグの観点だけでなく、ゲーム表現を説明するうえでも有効そうに思われる。
テキスト既読のサインは、テキストボックス右上に薔薇の花。
【 世界設定/キャラクター/AVGパート 】
この街……というかこの社会、けっこう人口が多いのかも。
「鉄砲隊」がいる……どうやら本当にファンタジー近世的世界設定である模様。魔法関係でも、どうやらネイティヴの魔法使いがいなくなっているとおぼしき描写がある。旧作群と共通の世界設定であるなら、時代が下るにつれて人間世界に存在する魔力量が減少していっている筈だから、人間がアイテムに頼らずに魔力を魔法として行使するのが困難になっているという描写とも合致している。ただしその一方で、人間世界の魔物(魔力生物)たちはまだ存在しているようであり(cf. 施設「魔法陣」の説明テキスト)、魔力量の変動がどのように進行しているのかは体験版時点ではよく分からない。
春日さんと大波さんと渋谷さんと桜川さん(登場順)がモブ役だなんて、贅沢すぎる……。『雪鬼屋』の時もそうだったし、その世界にいる一人一人の存在感をきちんと立てていくことがSLG+AVG作品にとっていかに重要なことかが、あらためて強く実感できる。
……でもしかし、主演青山氏の存在感こそが物語をきちんと引き締めてくれているというのも確かだ。今作でも、台詞一つ一つが適切なフレージングと良くこなれたアーティキュレーションで、しっかりと聴き込ませてくれる。
篠原氏も好印象。丹念で誠実な芝居ぶりは、この利殖判断のクールさと対人配慮の細やかさを併せ持ったキャラクターと上手く調和している。というか、テキス トのみを見るとわりと毒気のあるキャラクターのようなので、篠原氏の声でそれを解毒(中和)したのはたぶん正解だろう。
先輩メイベル(青山氏)と新人エレナ(萌花ちょこ氏)の取り合わせが、なんだかリアル。
ロウメイといいツクリといい、内藤氏は学究的発明家に好意的だなあ。
団員キャラクターたちが最初から揃っているというのはちょっと意外だったが。
セイドリン教会のウェンディさんって、もしかして……男の娘?
【 ゲームデザイン/SLGパート 】
ゲームデザインの基盤は、『グリンスヴァール』の施設設置 + 『王賊』のユニット管理 + 『巣作り』の移動ルート構成&防衛戦闘の組み合わせだろうか。戦闘はかなり激しい。序盤のサバイバルは、「交流会」で最低限の資金&防壁を早急に揃えておいて、「敵勢力」コマンドでこまめに敵軍を削っていくというのが常道だろうか。なにしろ、まともにぶつかると彼我の戦力差が大きすぎてとても耐えきれない。「交流会」のカードの引きが悪かったり、敵勢力を減殺する前にいきなり攻めてこられたりすると……。敵勢力が増強されていくようなら、地力で戦闘を乗り切れるようにならなければいずれ詰んでしまう危険がある。「研究」コマンドでのスキル開発も、長期的には必要になってくると思われる。
試してみたら魔法隊がおそろしく強い。これなら、前線に石壁とセットで置いておくだけでかなりの数の敵を撃退できる。2隊も用意して魔法能力を強化しておけば、門前まで追い込まれても安全に撃退できる。
ダメージを受けたユニットの逃げ場が少ないのは、防衛戦という事情を考慮しても、少々もどかしい。マップ中列には、画面左右にユニットを逃がせる場所が用意されてはいるものの。
ゲームの進行フラグやキャラクターイベントの発生フラグは、どうなるのだろうか。現時点の汎用ユニットのみの戦闘進行でもメイベルやディーの音声が聞こえるので、個別キャラクターを表すユニットが出てくるわけではなさそう。従来のSHC作品では、そういうヒロインユニットの出撃回数や勝利回数などをキーにして個別ヒロインイベントが進行するというのが通例だったが、今回はどうするのだろうか。シンプルに(『グリンスヴァール』以前の流儀で)「○○と会う」コマンドの実行回数準拠になるのだろうか。もしもそうなら、「SLGパート=大状況の進行」と「AVGパート=個別ヒロインイベントの進行」とがシステマティックに分離されるということになるが。
名前 | 統率 | 身体 | 知力 | 政治 | 魅力 | スキル |
ヒート | 60 | 50 | 60 | 65 | 55 | 司会進行/建設 |
メイベル | 75 | 70 | 55 | 50 | 70 | 必殺突き |
ルア | 55 | 45 | 75 | 85 | 55 | 知者/商才/節約者/情報分析 |
ディー | 70 | 65 | 65 | 65 | 60 | 奇襲心得 |
エレナ | 55 | 45 | 50 | 45 | 50 | - |
リーフ | 65 | 55 | 50 | 50 | 55 | 弓術心得 |
ロウメイ | 40 | 40 | 85 | 35 | 60 | 発明家/魔法 |
ツクリ | 55 | 60 | 75 | 45 | 55 | 発明家/銃器取扱/山の人 |
体験版の描写から各キャラクターのステータスを考えると、さしあたりこのくらいだろうか(※一般人の値が45、人類の限界値は100としている)。
メイベルは個人戦闘力も部隊指揮能力も団内トップクラス。それに続いてディー、そして遊撃隊長のリーフ。ルアやツクリも、部隊運用の機微を理解している発言があるので、そこそこの評価ができる。エレナは、市民兵あがりの初心者たちの中では出来が良いと思われる。ツクリは獣人族なので身体能力は高い。インドア派のロウメイは平均以下。ヒート自身の指揮能力は不明だが、門壁建築の描写に鑑みるに十分的確な戦術的判断力は備えていると思われる。
財務に長け、不正帳簿を瞬時に見破り、場合によっては貴族を潰す(!)ことすら実行可能なルアは、知性は一流、政治力は超一流だろう。ディーも、団内運営全般についてルアと対等に話せるほどの水準で、経済や人事を十分理解している。ヒートは、門壁建設のアイデア(知力)や都市上層部との交流(政治)などがあるものの、現時点では際立った成果は描かれていない(――本編ではいずれ彼の能力が明かされていくだろうが)。ロウメイは、専門分野に関しては「引く手数多」の才能の持ち主だが、自身の行動原理の中で周囲に対する影響はまったく顧慮しておらず、社会性はきわめて低いと言わざるを得ない。
対外的な人的魅力や社会的信用に関しては、ヒートはそれほど自分を大きく見せていない。むしろ元貴族の肩書を持つメイベルの方が上と思われる。それ以外は、順当な順序で、ほどほどの値。どれも、一地方都市の傭兵団の一団員のレベルにとどまり、顕著な名声を持つというほどの存在ではないだろう。ただし、ロウメイは魔法学者や科学者の間で局所的に知名度が高いと思われる。
スキル面では、同社作品の常で、主人公の右腕キャラクター(ルア)はとにかく万能で有能。それ以外のキャラクターたちは、基本設定どおりに。
こうして個別的評価をまとめて全体を見てみると、辺境の一都市の傭兵団としては十分優秀な人材がバランス良く配されていることが分かる(――歴史SLGでいえば、超一流ではないが文武の人材がひととおり揃っているという意味で最上家、佐竹家、初期浦上家、相良家みたいな感じだろうか)。数十年に亘って都市を守りきってきたのも頷ける。メイベルは将軍として及第点のステータスだし、ルアは後方支援を任せておける屋台骨的人材だし、ディーは一都市くらいなら一人ですべて切り盛りできそうな万能ユニット。リーフ、ロウメイ、ツクリは、単体での運用は厳しいが、指揮官がうまく使えば大きな効果を挙げられるだけの高いポテンシャルがある。肝心の主人公が(一見すると)ぱっとしないステータスなのは、いつものこと。まあ、寝技が本業みたいなものだろうし……。
そして、個別ステータス評価を総合したユニット個性と、キャラクター設定(公式サイト)と、作中の描写におけるキャラクター像とが、きちんと合っていてブレが無いということも確認できる。もちろん私自身の評価バイアスはあるとしても、各キャラクターが自己の能力に応じた適切な地位及び活動に就いているというのは、シミュレートされた架空世界表現として非常に理に適ったものとして受け取ることができる。このような意味で、奇を衒うことなくアクターたちの理に適った行動の組み合わせとして架空状況を幅広く構築していくアプローチは、まさにこのブランドが得意としてきたものである。
デモムービー感想。
ムービーでの扱いを見るに、メイベルとルアの二人がメインヒロインなのだろうか。
「研究」コマンドに投資して編成可能隊種や実行可能作戦を増やしていくのが戦力増強手段か。ただし、デモを見るかぎりでは、隊種が少なそうなのが気になる。敵側は少なくとも十数種:「歩兵隊」「騎馬隊」「弓兵隊」「鉄砲隊」「投石隊」「偵察兵」「攻城隊」「塔隊」「弩砲隊」「砲兵隊」「補給隊」「工作隊」、それから戦闘時画面でハイエリー隊やミルカッセ隊とおぼしき隊、赤い鎌を持った暗殺者隊(?)、それからウェアウルフ隊、巨人隊といった異種族部隊もいる。
攻撃を受けて吹っ飛んでいく兵隊がかわいい。
作戦のヴァラエティはわりと広そう。作戦「龍騎兵の槍」の540ダメージが目を引くが、発動条件が限られているのか、それとも発動コストが高くつくのだろうか。
デモ最後のヒートたちが逃げている画面は、たぶんデッドエンド時のCG。
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