キャラクターの再利用(再登場)に関するメモ。
人気の出たキャラクターを、そのキャラクターだけを取り出して他の新規作品にスライドして(再)登場させるアプローチはあるだろうかと振り返ってみた。例えば、ファンタジーものの旧作に登場したヒロインを、その名前/外見/人格/音声の基本的輪郭は維持しつつ、新作学園ものに登場させる、といったようなもの。
1)典型的事例。分かりやすい例は、『ジブリール4』と『戦国天使ジブリール』だろう。現代世界もののキャラクターたちが、別世界に飛ばされて戦国大名等に成り代わったという体裁の作品であり、完全に相互無関係なキャラクターのみの流用というわけではないが、キャラクターを脚本から切り出して新たな物語に接ぎ木しているという点で、興味深い。
同様に、『モノごころ、モノむすめ。』から『パトベセル』への「怪盗ロール」の再登場は、公式サイトで「パラレルワールドに近い存在」と明言されており、これは明らかにMay-Be
SOFTスタッフの遊び心の所産だろう。
『人形の館』のヒロインたちが微妙に名前を変えてサブキャラとして『DUNGEON CRUSADERZ』に登場したという例もある(――「湯浅七海」→「ナナミィ」、「和泉紫苑」→「シーオン」、「槇之マリア」→「マイア」といった具合で、キャストも3人中2人が前キャラと同一声優。たしかベッドシーンもあった)。
『PiaキャロG.O.』には、『Piaキャロ2』のヒロイン「山名春恵」に酷似した外見の「山名トキ子」というヒロインが登場するが、両者の関連性は不明の模様。
alicesoftでも、「のぞみ」や「スパイ斎藤(斎藤美華)」といった常連キャラクターがおり、特に前者はしばしばベッドシーンを伴っている。『いな☆こい』に対する『ねこ☆こい』は、副題もほぼ同じなら主演キャストも同じという徹底ぶりだが、どのようなコンセプトでどのようなつながりがある(or無い)のかは未確認(※後者未プレイ)。
このようなキャラクター流用の自由さを最も幸福に享受しているのは、『はっちゃけあやよさん』シリーズなのかもしれない。仄聞するかぎりでは、作品相互間にストーリー上の実質的連関はほとんど無く、もっぱら「あやよさん(沢島綾代)」のキャラクター性がシリーズを牽引していたということらしい。
後日追記:「氷川雫」のことを失念していた。ダーク系フルプライス作品『クロス』(TRUST、2004年)のメインヒロインとして初登場したが、そのキャラクター個性が好評を博したため、キャラクター像それ自体は維持しつつ完全新規のストーリーで『オレの恋人 氷川雫』と『オレの奴隷 氷川雫』(TRUST、2006年)が制作された。この2本のロープライスタイトルでは、世界設定の大枠(例えば「充臨館学園」のような固有名詞)は『クロス』から継承されているが、男性主人公もそれぞれ別人であり、もちろんストーリーも独自のものになっている。「氷川雫」のキャラクター個性が発揮している特別な存在感も相俟って、これらは『クロス』の「続編」や「ファンディスク」とは言いがたいほどの自律性を獲得している。
2)地位の変化。『とらいあんぐるハート』第1作のサブキャラが第2作でヒロイン待遇になった「井上ななか」や、ブランド自ら「奈々子商法」を喧伝したLassの「千神奈々子」(ブランド第1作、第2作では脇役として登場し、第3作でヒロイン扱いになった)のようなパターンもある。
これとは反対に、旧作ヒロインがモブとして新作(非-続編)に出没するという例も多い。ごく個人的な思い出としては、『白詰草話』のヒロインたちが次作『Quartett!』の冒頭にこっそり登場していたのは嬉しかった。
ただし、一般的傾向としては、明示的続編でもないかぎり、旧作ヒロイン――同一人物設定であれ、単なる同一外見キャラクターであれ――に新作の物語で大きな役割を果たさせる例は少ない。おそらく非常に稀な例として、『カルタグラ』の一ヒロインだった「初音」(主人公と結ばれる専用EDがある)が、『殻ノ少女』で再登場して、前作とは別の男性主人公と結ばれた。また、イレギュラーな形態ではあるが、『Piaキャロ2』の家庭用版で登場したヒロイン「愛沢ともみ」が、『Piaキャロ3』でヒロインとして再登場した(もちろん『3』では、『2』とは別の主人公と結ばれる)という例もある。
3)その他の事例。SHCの金髪青山ゆかりヒロインズは、ある特定のキャラクターイメージへの再挑戦といった趣が無くはない。e.go!作品からでぼ作品への世界設定継承とそれに伴うキャラクター継承は、明言しにくい暗黙の了解レベルの事柄だろう。
4)脇役同士。こうした手法は、主要キャラクターよりも脇役においてこそ、多用されている。姿のよく似た脇役たちが「スターシステム」的に再登場する例は、Leafの「長瀬」(※一族同士ということになっているが)、Liar-soft作品の「けーこ」、ninetailの近藤&マッコイ、IGのタコ焼き屋男性など、枚挙に暇が無い。alicesoftも、男性サブキャラのレベルで何度かこうした手法を実行している(老将バレス、知将ストーリンなど)。詳しい説明は演出論(Ⅳ章3節3款)で書いたとおり。同一人物の再登場と見做せる場合もあれば、単なるキャラクター像のみの移植再利用とおぼしき場合もある。
5)部分的継承。キャラクターとストーリーの切断が全面的なものではなく、実質的なつながりが(部分的に)維持されている例も少なくない。典型的なのは、作品間共通世界設定と見做せる場合(例:age)であるが、『終の館』シリーズや『神楽学園記』なども部分的にキャラクター流用の趣を示している。前者はロープライス複数本からフルプライスタイトル『ホームメイド』への移行が当初から予定されていたもの(たしか前世設定だった)だし、後者はシリーズものの一環(一種のFD)だが。
いずれにせよ、 このようなお気楽な流用はあっていいと思う。キャラクターたちの強度は、この程度のことでは損なわれるものではないだろう。
これらの他にも、もっと明白なキャラクター流用の例があったような気がしないでもないが、具体的に思い当たるものが出てこない。キャラクター性主導についてはHARDの「あやよさん」、複数の作品に登場してその都度脈絡なく蹂躙されるという点ではalicesoftの「のぞみ」が、最も典型的な例と言えるだろうか。「千神奈々子」は同一人物だったっけ……『3days』と『11eyes』は共通世界設定(陰陽師の草壁家など)の筈で、どうやらLass4作品すべてが共通世界であるらしいが。
『人形の館』(2002)は当時から非常に高い評価を受けており、ゲーマーたちの間ではアトリエかぐやの出世作と目されていたと記憶しているが、実はまだプレイできていない(未購入)。なので、『DC』にヒロインたちが再登場した時も、知識としては再登場キャラであることに気付いていたものの、特別な愛着や感慨(あるいは、ヒロインが別の男性に抱かれる嫌悪感とか)を持つことは無かった。
(2013/02/20公開。2013/05/15単独記事化)
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